今日もあなたに会える


1日の中でこの時間が、すき














毎朝、定刻






















毎日きまった時間のバスに乗る

その時間のバスには必ず彼がいるから

立海大付属中2年 切原赤也くん

彼はテニス部に所属していて、毎日行われる朝練のために

このバスを利用しているようだ




そう知ったのはつい最近のこと

私は今まで適当な時間のバスに乗っていたので

バスに乗っている人は毎回違っていた

…が、1人だけ

あのバスには毎日乗ってくることに気づいたんだ




朝は1日の中で1番すき

彼に会える唯一の時間だから





切原くんは朝が苦手のようで

毎朝学校付近のバス停までずっと眠っている

すごく気持ちよさそうに眠っているので、

こっちまでなんとなく嬉しくなってしまうくらいだ

そして器用にも、バス停に着くと同時に目が覚める

むくっと起きて慌ててバスを降りる姿がとても印象的だった















そんなある日

いつものようにあのバスに乗って

切原くんも乗っていることを確認する




( 今日も、寝てる・・・ )





よほど昨日の練習が辛かったのか

もしくは夜更かししてしまったのだろうか

今日はいつもより深い眠りについているように見えた

首もコクリ、コクリと頷いているように上下していて

なんとも不安定だ



今日は偶然にも切原くんの座席の前に立っていた

いつも遠くからチラチラ見る切原くんが

今日は近くにいる

いつになく心臓がバクバクしていて

眠りを妨げないようにするので精一杯だった










「 次は、立海大付属中学前  立海大付属中学前 」









バスの運転手さんのアナウンスが聞こえた

…切原くんはまだ眠っている



ほんの少しして、バス停に着く

プシューっとバスの扉が開いて前の方の人から順に降りていく

私もその順にならって降りようと足を一歩進めようとした

そのときに最後にチラッと切原くんを見るが、

いつもと違って今日はまだ眠っている






( …あれ? おかしいな。いつもならここで起きるのに )






不思議に思いつつも、早く降りなければバスの扉が閉まってしまう

そうすれば、切原くんは朝練に遅刻してしまうだろう

どうしよう、どうしよう と悩んではみたものの

悩むだけ時間が勿体ないと思い、

意を決して起こすことにした










「 …あの、バス停つきましたよ 」







肩を揺すりながら声をかけると

切原くんの目がゆっくり開いた









「 …うっわ、やべ! 遅刻!! 」









そう言って、急いで降りて行ってしまった

それを見て私もバスを降りた

またプシュー、と扉が閉まってバスは次のバス停へと走り出す



私の少し前には切原くんの背中があり

彼がが今から部室の方へ走りだそうとしたその瞬間







「 …あ 」





突然、止まった

ぐるっと方向転換をし、私と向き合う









「 起こしてくれてサンキュ、さん! 」









( …え? どうして、私の名前を… )



そう思った私の心を読み取ったのか、切原くんはニコッと笑った












「 さんだろ? 俺、切原赤也!

  実は、毎朝同じバスに乗ってるさんのこと知ってた! 」









切原くんはそう言って、恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いた後、

ぶんぶんと私に向って手を振った









「 また、明日な!! 」












20080920