「 さいてー! 切原くんなんて大嫌い!!! 」














本能行動






















…やってしまった

俺何考えてんだろ  ってのことしか考えてねーんだけど

だってさ、しょうがなくない?

好きな子が目の前で、上目遣いで俺のこと嫌いじゃないって言うんだぜ?

ほんとは俺のこと好きなんじゃないかなってちょっと期待したんだけど

「俺のこと好き?」って聞いたら

真っ赤な顔して、上目遣い(少し涙目)で「嫌いじゃないけど…」って言われたらさ

気づいたらキスしちゃってたりして

誰が悪いって言ったらそりゃ俺だけど

いや、も悪いだろ! 可愛すぎんだよ!

…でも、あれはまずかったよなぁ

大嫌いなんて言われちゃったし…

結構ショックなんだけど



俺って相当バカなのかも。


















ずっと非常階段にいるわけにもいかなくて、教室に戻ることにした

サボった方が良かったかな… 教室に戻ったとしても、と同じクラスだし

絶対、気まずいよなぁ

避けられちまうのかな、俺

それもそれでショックだな

嬉しいはずの同じクラスが、今はすげー気まずく感じる

しかもお隣さんだったりして

さっきまではあの席大好きだったんだけどなー…



ええい、もう成り行きに任せてしまえ!




俺は意を決して教室のドアを開ける




そこは、休み時間だけあって騒がしかった

無意識のうちにの姿を確認すると、は友だちと楽しそうに笑っていた

それに少しだけホッとして、俺は自分の席に座り、机に突っ伏す

…次は英語だっけ  宿題してねーけど…いいや、寝よ

















「 ではー…35ページの15行目。 切原、訳してみろ。  」



「 … 」



「 切原ー? 」



「 … 」



「 しょうがないな。 、そのバカ叩き起してくれ 」












え、私が?!

でもあんな事があったばかりだし… 何か気まずいよね…

先生の命令だもん、仕方ないよね?

そう思って、切原くんの方に顔を向ける

寝顔が天使みたいだった

すごく気持ちよさそうに眠っていて、柔らかそうな髪が春の風で揺れている

さっき大嫌いとか言っちゃったけ  その時の切原くん、すごく悲しそうな目してたなぁ…

ほんとは大嫌いなわけない ほんとは嬉しかったし、ドキドキだってしたんだ

でも、この前、切原くんは好きな人がいるって言ってたし…

私のこと好きでもないのに、キスとかしてほしくなかった

そんなことされちゃ、期待してしまう自分がいるから












「 …切原くん? 先生に当てられてるよ? 」








少しだけ彼の体を揺さぶってみた

でも彼は、「うぅん…」と呟きながらまた気持ちよさそうに眠ってしまった

どうしよう、こんな気持ち良さそうなのに無理に起こしちゃ可哀想だよ…

おろおろとしていると、シビレを切らしたのか先生がこちらにやってきた









「 …こぉら切原!さっさと起きんかい!が困ってるだろうが! 」



「 いだっ!!! 」







教室が爆笑の渦に包まれた

先生が出席簿で切原くんの頭を思い切りたたいたせいで

切原くんは頭をかかえて飛び起きた

そんなに痛かったのか、涙目になっているところが少し可愛いと思ってしまった


さっき先生に当てられた問題を、英語が大の苦手な切原くんが答えられるわけもなく

先生に軽く説教されつつも、その授業は無事終了した












「 なぁ、、」



「 …なに? 」



「 さっきは、その…ごめん。 」



「 あ、いや… これからはあんなことしちゃだめだよ!好きな人いるんでしょ? 」










切原くんは、授業が終わると、隣の席の私に申し訳なさそうに謝ってくれた

私は、さっきのキスのことだとすぐに分かった

でも、切原くんは私の言葉を聞いて、頭をポリポリと掻きながら何かを考えているようだった

…私、何か気に障るようなこと言っちゃったかな?










「 ね、好きな人が居なかったらいいの? 」



「 え? 」



「 俺に好きな人が居なかったら、はキスさせてくれるの? 」



「 えぇ?! いや、あの、 」



「 だったら、俺はとキスしたいから、好きな人なんかいない 」














な?と言って切原くんは私の頭にポンと手を置いた

でも、私の頭の中は混乱状態

私とキスがしたいから?

好きな人がいない? …一体、どうゆうこと??

分かんないよ、切原くん













「 キスしてもいいですか 」










そう言って私の返事も聞かずに、切原くんの綺麗な顔が近付いてきた

きっと、止めようと思えば止められたのに

私は彼のキスを受け入れた

ここが教室の中だということも、クラスメイトがいることも忘れて












20080920