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あの頃の私たちは、きっとお互いがお互いのことを想っていて ただ一緒にいられるだけで幸せを感じていたはずなのに どうして、想いが一方的になってしまったんだろう ねえ、ブン太 あなたの心には誰がいるの―――…? 私はまだ存在していますか? 私は元々人見知りで、友だちと呼べる存在も少ない方だと思う だから、ブン太に話しかけられたときはすごくびっくりしたんだ 最初は戸惑いもあって、あまりうまく話せなかったけど ブン太はたくさん笑わせてくれたし、 バカなことをやりつつ私のことを気にかけていてくれるのが嬉しかった 付き合ってからの私たちは、きっと、幸せだったよね 隣にはブン太がいて、いつも仁王くんが茶化しにきて ブン太がむきになって、仁王くんが呆れたように笑う その光景がいつしか当たり前で、私にとって大切な時間だったよ ブン太は優しいから、 それが見慣れた光景であっても、先が読めていても、 私が好きな光景だって知ってて同じこと繰り返してたんだよね? …ありがとう。 でも、 ブン太は忘れてしまったのかな―――…? ブン太はかっこよくて、優しくて、私の大好きな彼氏 他の人に認めてもらえるのは、とても嬉しいことだけど、でも やっぱり自分の彼氏が他の子に告白されて、お菓子とか貰ってこられちゃうと ヤキモチだって妬くし、すごくモヤモヤする だけど、そんな醜い自分をブン太に見せたくないから ブン太に嫌われたくないから 私はいつだって、何も感じてないフリしてた 大丈夫、ブン太は私の彼氏なんだからって 言い聞かせても、言い聞かせても、どんどん不安になっていった ブン太が女の子に呼び出される度に、仁王くんが私の話し相手になってくれた いっつも嫌な顔せずに、私の気が済むまで話を聞いてくれた ( また、呼び出しか… ) 今日も女の子に呼び出され、私の隣から席を立って行ったブン太 最近は、一人の決まった女の子がよくブン太に会いにくるようだ 「 溜め息つくと幸せが逃げるって…知っとった? 」 それを見て誰にも気づかれないように小さく溜め息をついたつもりだったが 仁王くんには気づかれてしまったらしい 「 …はは。じゃあ私の幸せは、結構逃げちゃったわけだね 」 そう言って、無理に笑ってみせるが仁王くんは「 無理しなさんな 」と 私の頭をポンポンと軽く撫でてくれた その手の温もりが、私に泣いてもいいんだよと言ってくれているようで 教室にいるにも関わらず、私はボロボロ泣きだしてしまった 仁王くんは私が泣いてしまったのを見て一瞬驚いた顔を見せたが、 スッと私の腕を引いて椅子から立ちあがらせた 「 …場所、変えるぜよ 」 私を気遣って、屋上に連れて行こうとする仁王くん 私と彼が話をするときは決まって屋上だった ただ私はいつも泣かなかったので、仁王くんの隣を歩いて屋上まで行けたのに 今日は泣いてしまって自分で思うように歩けないため、仁王くんは私の手を引いて前を歩いてくれている その優しさが、何だか胸に染みて、また涙がでた 屋上についてからも、仁王くんは何も話そうとはせず、私が落ち着くのを待ってくれている その間ずっと私の頭を撫でていて、決して無理に話させようとはしなかった しばらくそうやって頭を撫でられていると、落ち着きを取り戻してきた 「 ありがとう… 」とお礼を言うと「 …ん 」と言われ、また頭を撫でてくれた 「 …私とブン太が付き合ったときね、お互いの心の中にお互いのことしかなかったと思うの。 でも、今は…たぶん私じゃない誰かもブン太の心の中に存在してる。 」 「 は…それが誰か分かっとるんか? 」 「 分かってるよ。呼び出されて、あんなに嬉しそうに駈け出していく背中を見ればすぐ分かる。 」 「 なあ。は丸井の彼女なんじゃろ? だったら、丸井に直接文句言えばよか。 彼女なんじゃから、遠慮とかいらんと思うが 」 「 …言えるわけないよ。ブン太に嫌われたくないもん… 」 「 そんなことで嫌うもんかのう? 俺だったら嬉しいけど 」 もし、仁王くんが、彼氏だったら。 こんな不安もなく、過ごせるのかな…? ねえブン太 あなたは私が泣いている間もあの子と笑っているのですか 私はもういらない存在なのですか 私はまだあなたのことが好き、なのに―――… しばらく仁王くんと屋上で話してから教室へ戻った するとブン太は珍しくもうあの子の元から帰ってきていたようで 「 ったくお前らどこ行ってたんだよ! 」って笑顔で怒られた 楽しそうな表情 嬉しそうな声 「 !今日も一緒に帰ろーぜぃ! 」 いつもと同じ言葉なはずなのに、 何故か私は、身震いがした 毎日一緒に帰っているけど、なんか… 行ってはいけない、気がしたんだ―――… 20081004 |