あなたの心はいつから私だけのものじゃなくなったの?

私とあなたの大切な日々は…もう戻ってこないのですか?



もっと、自分の気持ちを正直に伝えられていたなら

未来は…変わっていましたか?
































嫌な予感がしていたあの、放課後

いつも通り教室でブン太の部活が終わるのを待つ

付き合った頃の私だったら、待っている時間もドキドキしたりして楽しかったのに

なんでだろ、今日は胸騒ぎしかしないよ…

考え事をするたびに悪い方向へと考えてしまう



ねえ、お願い。 この不安を取り除いて?

そうしたら、また笑えるから―――…











空が赤みがかってきた頃、静かだった教室にガラっと扉を開く音が響いた

もう部活が終わったのかと後ろを振り返ると、それはブン太ではなく、仁王くんだった






「 仁王、くん? 部活終わったの? 」






仁王くんは自慢の銀髪を夕陽で赤く染めながら、私の座っている前の席へと腰掛ける

私の目をジッと見つめてから、口を開いた







「 …泣いてはおらんようじゃな 」



「 もー泣かないよ。今日あんなに泣いたんだから 」



「 そうか?俺はの心の泣き声が聞こえたから、来てみたんじゃけど 」







びっくり、した

仁王くんがわざわざそんなことのために来てくれるなんて思いもしなかった

それに、本当に私の心の声が聞こえたのだろうか?

たしかに、また泣きそうになってはいたけど

あんなに遠くのテニスコートからそれを感じ取ってくれたんだろうか








「 今日も丸井と帰るんじゃろ? 」



「 う、ん 」



「 我慢するなよ。言いたいことがあるなら、言えばよか 」



「 …うん 」



「 また、泣きたくなったら俺んとこ来んしゃい。 もっと頼ってよかよ 」



「 …うん 」



「 ん、いい子 」









そう言って、仁王くんはあの優しい手で私の頭を撫でてくれた

なんか、この手、すごく安心するなあ…








「 んじゃ。戻るとするかの 」



「 …え、部活終わったんじゃなかったの? 」



「 いや、抜け出してきた 」








ガタっと席を立ってドアの方へと歩き出した仁王くん

彼は私のために部活を抜け出してきてくれたのかな…?

詐欺師と呼ばれる彼だけど、紳士並の優しさを持っていると私は思う








「 仁王くん!…あ、ありがと! 」








彼は背中を向けながら手をヒラヒラさせて教室を出て行った

























「 、お待たせ! 帰ろーぜぃ! 」








それから三十分もしないうちにブン太は部活を終えてやってきた

私はいつも通り、「 お疲れ様 」と笑って言った

…うん、大丈夫。 いつも通りだよ

ブン太の話す話だって今日の部活の内容だし、

きっとあの時感じた不安や胸騒ぎは、気のせいだったんだ




そう思って、少しホッとした時だった









「 な、。 俺大事な話があんだ 」









いきなりそんなことを言われたのでドキッとした

さっきの安心もどこかえ消え、バクバクと心臓が鳴り出す

…やだ、また胸騒ぎがするよ










「 俺、好きな子が出来たんだ 」










…頭を、鈍器で殴られたようだった









「 その子、愛音っていうんだけど。なんかそいつの傍にいてやりてーんだ! 」







やめて。







「 すげーよく笑う子でさ。なんかめっちゃ気ぃ合うんだよね 」







…やめて。








「 俺、もっとあいつと居て、あいつの笑顔を見てたいんだ 」








やめ、て…。








「 …だから悪いけど、俺ら別れよ? 」








やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。

やめて。やめて。やめて。やめて。やめて!







どうしてその子なの?

どうして私じゃダメなの?

私の何がいけないの?

ダメな所があるなら、全部直すから…別れようなんて言わないで…

ブン太は私に言ったじゃない  私の笑顔が好きだって

もう嫌になった? 今は私の笑顔じゃなくて、その子の笑顔がいいって言うの?

嫌、嫌なの  私にはあなたしかいないのに!







そう思っている心の声は、口から出ることもなく、ぐるぐると心の中を彷徨っている

ごめんね、仁王くん

やっぱり思っていることの一割も言えないや…








「 …一つだけ聞いていい? 」









心の中で思っていることは、決して口に出すことは出来ないみたいだけど

一つだけ確かめたいことがあるの








「 …何?」







「 私のこと、ちゃんと…好き、だった…? 」








その答えを聞いて私の気持ちがどうなるとかそういうことじゃなくて

ただ、ただ、あの日々は… あの幸せだった日々は、確かなものだったんだと

あなたに認めて欲しかったの










「 …あぁ、大好きだったぜぃ 」








そう言って最後に見せたあなたの笑顔は、

あの頃と同じ笑顔ではなかったけれど

あなたが私の笑顔を好きだと言ってくれたように、

私もあなたの笑顔が大好きだったんだよ―――…







「 今まで、ありがと… 」







あなたが笑ってさよならするなら、

私も笑わなくっちゃね








「 …おぅ。俺も、ありがとな 」











ねえ、本当は別れたくなんかなかったよ

本当は泣いてすがりたかったんだよ


でも、そうしたらあなたは困ってしまうから


最後まで涙は見せなかった








私はあなたのいない日々を、これからどうやって過ごせばいいの?

ただあなたがいないだけでこんなにも前が見えなくなってしまうなんて思わなかった





ねえ、




私は今でも、ブン太が大好きだよ―――…











20081013