人間というのは欲張りな生き物だ

一つのことが叶うと、それ以上を求めてしまう



最初は、それでけといいと思っていても




なんて愚かな生き物なんだろう

























との屋上の一件以来、俺はなるべくと行動するようにしていた

帰りも一緒に帰った 時には寄り道もしたし

やっぱり辛そうな表情は変わらなかったけれど、

俺はただの笑顔が戻る日を信じて、あのことをあまり考えさせないように努めていた



あぁ、俺はばかだ

不謹慎かもしれないけれど、といる時間が増えたことがこんなにも嬉しい

たとえあの笑顔はなくとも

こんなことなら、もっと早くに行動に移せばよかった
















「 、どれが欲しい? 」









今日は帰り道にゲーセンに寄っていた

別になにかのゲームをするわけでもなく、フラッと歩いていると

は一台のユーフォーキャッチャーの前で立ち止まった

ボーッと中の物を見つめていたので、何か欲しい物があるのかと思って聞いてみた









「 え、…あっううん。別に欲しいわけじゃないから。 」



「 遠慮しなさんな。 …あの赤いのか? 」








赤いぬいぐるみに視線があったように思えたので、そう問いかけると

の肩がわずかに動いた










「 …ううん。あの、青いの 」



「 …おう。任せときんしゃい 」










肩が震えた理由が、分かった気がした

たぶん赤い色を見て丸井を思い出したんだと思う



今、この瞬間に一緒にいるのは俺なのに

は俺なんか見ていない

俺のことを考えていない

の心にあるのは、まだ丸井の存在だ



あいつが、をこんなに傷つけたのに



どうして、あいつの存在はこんなにも大きいのだろう

俺の存在が超えることはあるのだろうか…

の心の中が俺でいっぱいになることはあるのだろうか…




なんて、醜い

俺はただ、傍で見守るだけでいいと思っていたはずだ



だけど、今は―――…


俺を、見てほしいと思ってる


一緒にいるときだけでもいい

せめて話しているときぐらいは、俺だけを見ていてほしい…









「 ほれ、取れたぜよ 」









俺が容易く取ったお目当ての青いぬいぐるみを手渡すと、は「 ありがとう 」と礼を言った









「 なんか、青色って仁王くんって感じ。 」



「 …俺? 」



「 うん。ほら、青色ってなんか優しいイメージじゃない? 」



「 優しいイメージだと何で俺? 」



「 仁王くん優しいから。 これ見るたびに、仁王くんが思い浮かぶね 」










「 ふふっ 」と言って小さく笑ったは、本当に誰もが見とれてしまう程可愛かった

そして可愛いことを言ってくれる


…あー。もう。 可愛すぎなんじゃって。


でも、あのぬいぐるみを見るたびに本当に俺を思い出してくれるなら

その瞬間の俺の存在は、少しでも彼女を支配しているのだろうか


たったそれだけのことでも、こんなに幸せに思えるなんて




どうしよう。 今、ニヤけてないだろうか










「 ならの頭の中は俺でいっぱいじゃね 」










そういつものように意地悪そうに微笑んで、の髪をくしゃ、っとすると

は「 なっ! 」と顔を赤くしてきゅ、とぬいぐるみを抱きしめたのだった







丸井、お前ばかだよ

の手を自ら離すなんて…


でも、今さら後悔したって遅い

俺はお前にを渡す気なんてさらさらないからな










「 帰ろか 」



「 うん、そうだね 」









の返事を聞いて了承も得ずにの手をとる

君の赤くなった顔を見て、すごく愛しいと思った








…すまん。  だけど、



俺は、繋いだこの手を離したくはない―――…











20081026